夏目漱石の「彼岸過迄」を読了!あらすじや感想です!

小説 小説

夏目漱石の小説「彼岸過迄」についてです。

ネタバレもありますので、ご注意を!

目次

彼岸過迄とは
主な登場人物
あらすじ
・風呂の後(全12章)
・停留所(全36章)
・報告(全14章)
・雨の降る日(全8章)
・須永の話(全35章)
・松本の話(全12章)
・結末
感想

彼岸過迄とは

1912年に発表された
夏目漱石の長編小説「彼岸過迄」は、
後期三部作の最初の作品で
後に続く二作は「行人」と「こゝろ」です。

本編の前に「彼岸過迄に就て」という
作者による読者へのメッセージがあり、
作者の近況や小説の説明がつづられています。
この中で「彼岸過迄」というタイトルの
説明もあり、作品の執筆が
元旦から彼岸過ぎまでの予定だったので
このタイトルになったとあります。
実際、小説の内容はタイトルと
全く関係ありません(^^)

小説本編は「風呂の後」「停留所」「報告」
「雨の降る日」「須永の話」「松本の話」
という6つの短編から成り立っていて、
最後に「結末」という短い締めの章があります。
それぞれが独立した話ではなく、
基本的にはつながった話になっています。

内容は主に若者の日常生活や
恋愛話が中心ですが、
短編ごとに文体や視点が変わるケースもあり、
かなり複雑で長い小説になっています。

主な登場人物

・田川 敬太郎(たがわ けいたろう)
主人公兼物語の進行役。
大学卒業後、仕事探し中。

・須永 市蔵(すなが いちぞう)
田川敬太郎の友人で、
本作の真の主人公といえる人物。

・田口 要作(たぐち ようさく)
須永市蔵の叔父(妻が須永母の妹)。
会社経営者。

・田口 千代子(たぐち ちよこ)
ヒロイン。田口要作の長女で須永市蔵の従妹。
妹と弟がいる。

・松本 恒三(まつもと つねぞう)
須永母の弟で須永市蔵や田口千代子の叔父。
高等遊民を自称。

あらすじ

①風呂の後

主人公…田川敬太郎/全12章

大学卒業後、なかなか仕事が見つからない
敬太郎は、森本という30代の役所勤めの男と
同じ下宿に住む。
敬太郎は森本から北海道での放浪生活の話を
してもらうなど、二人は仲が良かったが、
ある日突然、森本は下宿から姿を消す。
敬太郎は下宿の主人から、
森本が下宿代を滞らせ、さらに
役所も辞めていたことを聞かされる。
しばらくして森本から敬太郎へ届いた手紙には、
今は中国へ渡り仕事をしていることや
愛用の杖を譲ることが書かれていた。

以下は敬太郎視点での各章要約
・1章
下宿で朝から風呂に行くと森本がいる
・2章
風呂を出て森本を下宿の自室へ招く
・3章
役所勤めの森本にはかつて妻と子がいた
・4章
自分はこの夏大学を卒業したばかり
・5章
森本の非凡な話を聞くために部屋へ招く
・6章
自分は仕事を探しているが見つからない
・7章
森本は酒を飲みながら話をする
・8章
森本は北海道での放浪生活の話をする
・9章
ある日、森本が下宿から姿を消す
・10章
森本は下宿の支払いをせず、役所も辞めていた
・11章
森本から手紙が届く
・12章
森本は今中国で働いているとのことだった

②停留所

主人公…田川敬太郎/全36章

敬太郎は友人須永の紹介で、
彼の叔父である実業家の田口に
仕事を紹介してほしいと頼みにいく。
何度かすれ違いがあった後、
敬太郎は田口から、停留所で
ある男性の行動を探偵してほしいと依頼される。
敬太郎は停留所でその男性を待つが、
なかなか現れない。指定の時間も過ぎたその時、
目的の男性が敬太郎の近くにいた女性の前に
現れる。男性と女性は談笑し、
料理店で食事をし、また別れる。敬太郎は
その一部始終を、2人の後をつけて探偵した。

以下は敬太郎視点での各章要約
・1章
友達の須永は自分より豊かな暮らしをしている
・2章
須永の家の近くで彼の家の門をくぐる女性を見る
・3章
須永に促され家に入るが、女性のことは聞けない
・4章
帰る時には、入る時にあった女性の下駄がない
・5章
森本の杖には、彼自身が彫った蛇の模様があった
・6章
森本への返信の手紙を書く
・7章
須永の紹介で彼の叔父に就職の相談をすることに
・8章
須永の叔父の田口を訪問するが日を改めることに
・9章
再び田口の家へ行くが、また日を改めることに
・10章
須永に文句を言いにいくが不在で、彼の母と話す
・11章
須永は叔父(母の実弟)に会いに矢来へ行っていた
・12章
須永に紹介された田口は、内幸町に住む母の妹婿
・13章
須永の母は田口をひょうきん者だと言う
・14章
田口に仕事を紹介してもらうことを諦める
・15章
今後のことを占ってもらうことにする
・16章
一軒の占い屋を見つける
・17章
占い屋のお婆さんに「文銭占ない」をしてもらう
・18章
占いの結果を聞く
・19章
下宿へ戻ると田口から電話が掛かってくる
・20章
田口を訪問し、なんでもやりますからと頼む
・21章
田口からある男性を探偵するよう依頼される
・22章
探偵する方法を思案する
・23章
考えがまとまる
・24章
森本の杖を手に、探偵をするため停留所へ向かう
・25章
停留所で男性を待ちぶせるが、なかなか現れない
・26章
ふと気が付くと、若い女性が近くに立っている
・27章
女性は電車に乗らず、その場から離れない
・28章
指定の時間が過ぎたが、目的の男性は現れない
・29章
電車を降りた男性が、その女性の前で立ち止まる
・30章
男女は談笑して歩き出し、その後をつける
・31章
男女は西洋料理店に入る
・32章
男性の顔を見て、田口の依頼にあった特徴を確認
・33章
男女の後ろの席で、会話を盗み聞く
・34章
食事が終わりそうなので、先に店を出る
・35章
男女も店を出て停留所まで戻り、女性は乗車する
・36章
男性の方の後をつけるが、雨の中で見失う

③報告

主人公…田川敬太郎/全14章

敬太郎は田口に、探偵の結果を報告する。
田口は、探偵の対象だった松本という男性に
紹介するから会ってみろと言う。
敬太郎は松本の家を訪れるが、
今日は雨だから会えないと断られる。
晴れた翌日再び松本宅を訪れると今度は会える。
敬太郎は松本を探偵していたことを正直に話す。
すると松本は呆れながらも、
自分には二人の姉がいて、一人は須永の母で、
もう一人が田口の妻、つまり自分は田口の
義弟であり、あの日一緒にいた女性は
田口の娘であることを告げる。
そして松本は敬太郎に、
田口はきっと仕事を紹介してくれると言う。

以下は敬太郎視点での各章要約
・1章
田川に報告すべき内容を思案する
・2章
田口宅を訪れ、探偵の報告を始める
・3章
探偵の報告を一通り終える
・4章
田口は男性と女性の関係を問う
・5章
よく分からない、名前も分からないと答える
・6章
田口は男性を紹介するから会ってみろと言う
・7章
田口から「松本恒三様」宛の紹介状を渡される
・8章
矢来へ松本を訪れると雨で会えないと断られる
・9章
翌日は松本に会えるが松本は田口の悪口を言う
・10章
松本は自分のことを高等遊民だと称する
・11章
あの日、松本の後をつけていたことを告げる
・12章
探偵の一部始終を告白すると、松本は呆れかえる
・13章
松本は田口の義弟で例の女性は田口の娘であった
・14章
松本は田口が仕事を紹介してくれると言う

④雨の降る日

主人公…田川敬太郎,田口千代子,松本恒三/全8章

敬太郎は田口に仕事を紹介してもらい、
田口の娘の姉妹・千代子や百代子とも知り合いに
なる。千代子は敬太郎が探偵をした女性で、
また、須永の家の前で見かけた女性でもあった。
敬太郎は千代子から、松本が雨の降る日に
来客を断る理由を聞かせてもらう。
松本には5人子供がいて、千代子は当時2歳の
末っ子・宵子をとても可愛がっていた。
ある雨の降る日、
千代子は松本家で宵子と遊んでいた。
松本は紹介状を持つ来客があったので席を外す。
千代子が宵子にごはんを食べさせている時、
宵子が突然動かなくなり、そのまま
亡くなってしまう。通夜や葬式が終わり、
松本は「雨の降る日に紹介状を持って
会いに来る男が嫌になった」と言う。

以下は各章要約
※2章の途中から敬太郎が千代子から聞かされた話
・1章
田口の紹介で職を得た敬太郎は田口家と懇意に
・2章
千代子は松本家の末っ子・宵子を可愛がっていた
・3章
千代子が宵子の世話中、宵子が突然動かなくなる
・4章
医者を呼ぶが、宵子は二度と目を覚まさなかった
・5章
通夜に弔問客が何人か来た
・6章
宵子の葬式が行われた
・7章
親族が骨上げに向かった
・8章
松本は雨の日に会いに来る男が嫌になったと言う

⑤須永の話

主人公…須永市蔵/聞き手…田川敬太郎/全35章
※3章~12章と13章途中~35章は、
須永が敬太郎に話をしているという形式で進む

敬太郎は千代子の縁談話を偶然耳にするが、
以前から須永と千代子の関係が気になっており、
須永に千代子との関係を話してもらうことに。
その話は敬太郎の予想よりも
はるかに長かった・・・。
須永は、かつて父が亡くなる直前に言った
「もう少しおとなしくしないと母さんも
構ってくれないぞ」や、父が亡くなった時に
母から言われた「今まで通り
可愛がって上げるから安心なさい」や、
妹の妙が亡くなった時に父が母に言っていた
「まことにお前には気の毒なことをした」
といった言葉を覚えていた。
須永の母は、千代子が産まれた時に田口夫妻に、
千代子を将来息子の嫁にくれと頼んでいた。
しかし須永は、自分とは正反対の性質を持つ
千代子と一緒になる気はない。ある夏、
須永は田口家と一緒に鎌倉の別荘地へいく。
そこで須永は、田口家の知人・高木という
好青年が、千代子と親しくしているのを見て
嫉妬する。一人で先に東京へ帰った須永は、
作という小間使いの女性が気になる。鎌倉から
母が帰ってくると、千代子も一緒だった。
千代子は当初、先に帰った須永を責めるが、
須永は千代子の島田に結った髪を褒めたりして、
二人は楽しそうに話をしていた。
しかし、須永が高木のことを聞くと、
千代子の態度が急変する。
千代子は泣きながら、あなたは卑怯だ、
私と結婚する気がないのになぜ嫉妬するのか、
高木はあなたを受け入れるのに
あなたは高木を受け入れない、
それはあなたが卑怯だからだと告げる。

以下は各章要約
・1章
敬太郎は千代子の縁談話を偶然耳にする
・2章
敬太郎は須永に千代子との関係を話してもらう
以下、須永視点
・3章
父の死亡時母は今後も可愛がってあげると言った
・4章
妹の死亡時父は母に気の毒なことをしたと言った
・5章
千代子が産まれた時、母は将来嫁にくれと頼んだ
・6章
大学二年の時母から千代子の嫁の件を聞かされた
・7章
千代子との仲はギクシャクしていった
・8章
田口の叔父から千代子の嫁の件を聞かされた
・9章
ある日、千代子と二人きりになった
・10章
千代子は昔描いてあげた絵を大切に持っていた
・11章
千代子と一緒になるには、もう遅すぎると感じた
・12章
自分と千代子は正反対の性質を持つ人間だった
・13章
ある夏、母と共に田口家が保養する鎌倉へ行った
・14章
別荘にいた一人の男性のことが気になった
・15章
男性は別荘の主の息子・高木だった
・16章
高木は好青年で千代子や百代子の知り合いだった
・17章
千代子と百代子は海へ行くが、同行を断った
・18章
千代子、百代子と一緒に叔父を迎えに行った
・19章
ここ数年、自分と母の違いを研究していた
・20章
翌朝、千代子や高木らと一緒に船遊びへ出かけた
・21章
目的の藁ぶきの家へ辿り着いた
・22章
家の婆さんが船を呼びに行った
・23章
船に乗り千代子と同じ場所へ座った
・24章
タコがたくさん漁れ、岸に戻った
・25章
その晩、一人で鎌倉から東京へ戻った
・26章
東京の家には、作という小間使いの女性がいた
・27章
部屋で洋書の小説を読んだ
・28章
衝撃的な事件が起こる小説にとても驚かされた
・29章
鎌倉から母が帰ってくると、千代子も一緒だった
・30章
千代子は先に帰った僕を責めた
・31章
千代子は沢山話をしたが、高木の名は出なかった
・32章
翌日髪結いが来て、母と千代子の髪を結った
・33章
千代子の島田に結った髪を褒めた
・34章
高木の名を出すと、千代子が卑怯だと言った
・35章
千代子は結婚しないのになぜ嫉妬するのと泣いた

⑥松本の話

主人公…松本恒三/聞き手…田川敬太郎/全12章
※「須永の話」の違い、最初から最後まで
松本が敬太郎に話をしているという形式で進む

松本は須永母に頼まれて、
須永に千代子との縁談の話をした。
須永は答えを出さずにこう言った。
「自分はどうして人に嫌われるのか、
なぜひがんでいるのか、その理由を知りたい。
理由は母も叔母も叔父もみんな知っている。
自分だけに知らせない。
一番信用しているあなたも言ってくれない。
あなたを生涯の敵として呪います」
それを聞いた松本は、須永の出生の秘密、
すなわち、須永は母の実子ではなく、
父と小間使いの間に生まれた子であること、
子ができずに悩んでいた須永母が
その子を引き取り自分の子として育てたこと、
実母は御弓という名で出産後間もなく亡くなり、
髪を島田に結っていたことなどを話す。
須永は、全てが明らかになったので、
安心して気が楽になったと答える。
須永は大学の卒業試験が終わり、西日本へ
旅に出る。旅の先々から松本に便りがあり、
最初は葉書だったが途中から手紙になった。
そこには「出生の件はもうそれほど気にして
いない」とあり、旅先で須永の気持ちが
次第に晴れていくことが綴られていた。

以下は各章要約
※全章、松本視点
・1章
須永の姉も田口の姉も僕と市蔵が似ていると言う
・2章
しかし僕と市蔵では根本的に違うところがあった
・3章
須永の姉に頼まれ、市蔵と縁談について話をした
・4章
市蔵は涙を流し、自分の出生を知りたいと言った
・5章
市蔵は姉の実子ではなく、小間使いの子であった
・6章
実母は市蔵を産んでまもなく亡くなった
・7章
市蔵に全てを伝え、よい気持ちになった
・8章
市蔵は卒業試験を終え、西へ旅行に行くと言った
・9章
市蔵に旅の先々から連絡を入れるように伝えた
・10章
市蔵の手紙から彼の気分の変化が見て取れた
・11章
出生の件はもう安心して下さいと書いてあった
・12章
その後も旅を心から楽しむ手紙が何通も届いた

結末

主人公…田川敬太郎/章はなし

敬太郎は色々な話を聞いた。
森本からは放浪生活の断片を、
千代子からは幼児の最期を、
須永からは母や千代子との関係を、
松本からは須永の出生の秘密を聞いた。
森本に始まって松本に終わる話の中に、
敬太郎は入っていけなかった。
そこが敬太郎の短所でもあり長所でもある。
敬太郎は自分の前で
突然止まったように見える劇が、
これからどう永久に流転していくのか考えた。

感想

正直な感想は「とてもややこしい」です(^^;

一度読んだだけでは
理解しきれなかったですね~。

理由は主に3つ。

1つ目…登場人物が多くてその関係が複雑
2つ目…時系列がバラバラ
3つ目…文章の形式が突然変わる

1つ目の登場人物に関しては、須永(4人家族)、
田口(5人家族)、松本(7人家族)の3家族が
親戚(須永母・田口母・松本父が姉・妹・弟)
で、それぞれの家族の数が多くて、
さらにもう亡くなっている人もいれば、
お手伝いさんまでいるということで、
家族関係を理解するだけでも
一苦労でした(^^;

2つ目の時系列に関しては、
前半の3編(風呂の後、停留所、報告)と
後半の3編(雨の降る日、須永の話、松本の話)
が、時系列的には逆なんですよね。
前半3編で須永一族と仲良くなった田川敬太郎が、
後半の3編で過去の話を聞かせてもらっている
という形です。
なので、実際に起こったことの順番は、
雨の降る日→須永の話→松本の話
→風呂の後→停留所→報告になります。
これも一度読んだだけでは、
分かりにくかったです。

3つ目の文章形式に関しては、
最後の2編(須永の話、松本の話)で、
文章がそれまでの普通の形
「例:敬太郎は~をした」から、
須永や松本の語り口調
「例:僕は~と思う」に
変わる部分が出てきます。「須永の話」は、
これから須永の話が始まりますよ~
っていう説明があるのでまだいいんですが、
「松本の話」は、何の説明もなく
いきなり始まるので、最初は誰が話しているのか
分かりませんでした(^^;

ということで、とてもややこしかったんですが、
何度か読み返してようやく理解しました(^^)

いやもう、読みごたえは
十分すぎるほどあります(^^;

それでは、特に印象に残った点を
4つ上げたいと思います。

・途中で主人公が変わる

これはなかなか斬新だと思います。
ややこしくなる原因でもありますが(^^;
小説冒頭からの主人公・敬太郎も、
最後まで主人公であることは確かなんですが、
やはり「須永の話」の語り手である須永市蔵が、
本作の真の主人公だと思います。
須永と許嫁千代子の関係、
そして須永出生の秘密、
この2つが本作のメインテーマですからね。
敬太郎が主役の最初の4編
「風呂の後」~「雨の降る日」は、
後の2編「須永の話」「松本の話」のための
いわば前振り。
・・・ずいぶん長い前振りですけど(^^;
最初の4編で須永の家族や親族の紹介をして、
本作のクライマックスである
後の2編につなげていくという形になっています。
ともかく、真の主人公が別にいるというのが、
この小説の大きな特徴だと思います。

・須永と千代子の結末が分からない

真の主人公・須永とヒロイン・千代子は、
従妹同士で事実上の許嫁でもあります。
ただ、母同士が姉妹で、須永は母の実子では
ないので、須永と千代子には
実際の血のつながりはありません。
・・・この辺もややこしいですね(^^;
で、この2人が最終的に結婚したのか別れたのか、
そこが書かれていないんですよね~。
主人公とヒロインの結末が不明というのは、
消化不良です。まぁ、おそらく結婚は
しなかったでしょうけどね。二人の間に
できてしまった溝が大きすぎるので・・・。
千代子の結婚相手を予想するなら、
須永よりも、敬太郎かイケメンの高木サンだと
思います(^^)

・5女の夭折

4つ目の短編「雨の降る日」は、松本家の
当時2歳の宵子が亡くなってしまう話です。
幼いわが子が亡くなるという最大の悲劇・・・。
作者の漱石も、実際に5女が夭折しています。
なので、宵子が亡くなる場面は、
漱石の現実の体験が投影されていると思います。
そういう意味でも、印象深い場面でした。

・読みごたえのある探偵小説

2つ目の短編「停留所」は、
敬太郎が、実業家・田口要作の依頼を受け、
ある男性の行動を探偵する内容でした。
まぁ実際は、田口の娘である千代子と
千代子の叔父である松本のことを、
この二人は怪しい関係なのでは?と思いながら、
田口に担がれた敬太郎が後をつけ回していただけ
っていう笑い話なんですが(^^)
ただ、停留所に張り込みをして
2人の後をバレないようにつけていく場面は、
かなり緊迫感のある書き方がされています。
実際、本作の中で一番面白かった
場面です(^^)
全36章と本作の短編中、最も長いことからも、
漱石が力を入れて書いたことが伺えます。
漱石には珍しい「探偵モノ」になっていますし、
ある意味貴重な短編と言えるでしょう。

ということで、複雑で分かりにくいですが、
読みごたえがあり、面白い場面や
印象深い場面もある、そんな小説でした(^^)

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