夏目漱石の小説「草枕」についてです。
ネタバレもありますので、ご注意を!
草枕とは
1906年の小説「草枕」。
夏目漱石の中・長編小説としては、
「吾輩は猫である」「坊っちゃん」に
続く作品で、全13章から成ります。
冒頭の
「山路を登りながら、こう考えた。」
で始まり、
「智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。」
と続く部分は有名ですね。
この冒頭部分の意味は、
・知識を披露すれば煙たがられる
・感情に熱くなれば何もできなくなる
・意地を張れば疲れてしまう
…だから、とにかく現代社会は住みにくい。
といった感じだと思います。
作中では、主人公の画家の男性が
東京から熊本へ「非人情」の旅を行い、
旅先での出会いや出来事、
彼の感じたことや思ったことが綴られます。
「非人情」とは、薄情とか冷淡ではなく、
普段の生活から離れる、俗世間から離れる
といった意味になると思います。
作者の前2作は
ぐうたらな猫や無鉄砲な坊っちゃんが
文句ばかり言う作品でしたけど(^^;、
今作はインテリの東京人が
田舎でウンチクを(主に心の中で)語りまくる
作品になっています(^^;
あらすじ
●1章
画家風の30才男性。
俗世間から離れるため旅の途中。
物思いにふけりながら目的地を目指していたが、
道中、雨が降ってきて
通りかかった馬子に休む場所を聞いたところ、
茶屋があることを教えてもらう。
●2章
雨宿りのため茶屋へ。
店主のお婆さんによると、
目的地の那古井にある温泉宿は
志保田という人がやっている一軒だけ。
そこの娘さんは結婚した時、
振袖姿でこの茶屋の前を通った。
その振袖姿を見てみたいと言ったら、
お婆さんは娘さんに頼んでみたらと言う。
ただ、娘さんにとっては望まない結婚で、
さらに旦那が失業したこともあり離婚。
今は嫁ぎ先から戻っており、薄情だ何だと
色々な悪い噂を立てられているそうだ。
そんな娘さんに興味を持ち、宿を出る。
●3章
夜、那古井の温泉宿に着く。
寝ている時、女の声を聞き、
女の姿を見るという不思議な体験をする。
それが夢か現実かわからない。
朝、風呂から出た時に美しい女性に会う
●4章
朝出会った女性のことを女中に聞くと、
若い奥さん(=宿の旦那の娘さん)だと言う。
今使っている部屋は、
普段はその若い奥さんが使っている部屋だった。
そして部屋に若い奥さんがやってくる。
彼女は茶屋で話に聞いた志保田の娘さんで、
昨夜部屋で見たのも、
夢ではなく現実の彼女だった。
●5章
散髪屋で店主に志保田の娘さんの話を聞く。
彼女は、主人が失業して
贅沢ができなくなったから、
離婚して戻ってきた悪い女だと言う。
宿泊中の宿は分家で、岡の上にある本家には、
彼女と仲の悪い兄がいるらしい。
●6章
夕暮れ、宿の部屋で物思いにふけっていると、
志保田の娘さんが以前茶屋で見たいと言った
振袖姿で現れ、目を奪われる。
●7章
宿で風呂に入っていると、だれか入ってきた。
なんと志保田の娘さんだ!!!
湯けむり越しのその姿に、
しばし目を奪われるが、
彼女はホホホと笑いながら出ていった。
●8章
隠居している宿屋の旦那
(志保田の娘さんの父)に茶を馳走になる。
娘さんの知り合いである観音寺の和尚・大徹と
娘さんの従弟・久一も一緒で、
久一は数日後出征するそうだ。
娘さんの名前が那美だと分かる。
●9章
宿の部屋で那美さんと会話。
振袖姿のことや風呂場でのことも話す。
彼女に鏡が池で身投げして浮いているところを
画に描いてくれと言われ驚く。
●10章
鏡が池に来る。そこで、那古井へ来た時に
雨中で出会った馬子の源兵衛に会う。
彼から志保田家にまつわる話を聞く。
●11章
たまたま足が向いた観海寺で、
大徹和尚と話をする。
●12章
那美さんが男に財布を渡しているところを
偶然目撃。那美さんに見つかり、
あれは私の元亭主だと言われ驚く。
那美さんから、あなたはここに来てから
まだ画を一枚も描いていないと指摘される。
その後、那美さんと一緒に
彼女の兄の家(本家)に行き、
那美さんが久一に餞別の短刀を渡す。
●13章
志保田家の面々と一緒に、
出征する久一を見送るため駅に。
久一を乗せた汽車がいよいよ出発する時、
同じ汽車に那美さんの元亭主も
乗っていることに気づく。
元亭主と目が合った那美さんは茫然として、
これまで見せたことのない
「憐れ」な表情を見せる。
その那美さんの表情を見て、
ようやく画になるものを見つけるのだった。
感想
主人公の画家の、周囲の人や世の中、
さらには芸術に対する考え方が綴られていて、
文章の美しさを感じました。
芸術論や詩歌(俳句・漢詩)が
たくさん出てきて、正直、
全ての内容は理解できませんけど(^^;、
全部ちゃんと読めば
賢くなった気分になれますよ(^^)
内容が面白いという作品ではないかな?
主人公や周囲の人に
特別な何かが起こるわけではなく、
主人公とヒロインの那美さんの間に
ロマンスが起こるわけでもないので。
まぁ那美さんの突拍子もない行動は
色々と面白いですけど(^^)
そんな今作最大の見どころは、
何といっても主人公と那美さんが
お風呂場でばったり会うシーン!
間違いありません(^^)
何の前触れもなく、
突然この場面がやってくるので、
思わず二度読み、三度読みを
してしまうはず(^^)
しかもこれ、作者の実体験が元ということで、
うらやましいですね~(^^)
草枕ゆかりの地
草枕は、作者が熊本で英語教師をしていた時に、
岳林寺(熊本市島崎)から
小水温泉(天水町)まで、
山越えをして向かった経験を元にして
執筆されたと言われています。
作者が歩いた道や利用した温泉宿は現在、
「草枕ハイキングコース」や
「草枕の里」として整備されています。
「草枕ハイキングコース」は、
作者が歩いた岳林寺→草枕の里
(全長15.8km)を辿っていける、
以下のようなコースです。
※リンク先はすべて、自治体や観光地の公式サイトです。
岳林寺
…漱石が天水町の温泉地に向けて出発した地点
↓
鎌研坂
…冒頭「山路を登りながら、こう考えた」の山路
↓
鳥越峠・復元茶屋…主人公が利用した茶屋を復元
↓
金峰山…この山を越えて天水町へ
↓
石畳の道…当時の面影を残す道
↓
野出峠・茶屋跡…主人公が利用した茶屋の跡地
↓
草枕の里…目的地で小説の舞台
道中は案内板が立ててあるので、
草枕の舞台となった場所を
そのまま巡っていくことができます。
物語中の名所も出てきますし、
漱石もここを歩いたはず!と思えば、
歩きがいもありますよね~(^^)
「草枕の里」は、
漱石が宿泊した宿で物語の舞台でもある
「前田家別邸(漱石館)」や、
「草枕交流館」「草枕温泉てんすい」
などが整備されている草枕の観光地です。
「草枕の里」のすぐそばには、
天水町もう一つの小天温泉「那古井館」が
あります。
草枕を片手に、これらの地を巡るのも
面白いかもしれませんね(^^)
コメント
同化してその物になる数世界(草枕六)
数世界カタチと数が行き来する(絵本「もろはのつるぎ」)
三角は回り続けて円に生る
四角から一取りて三角に
円に観る点線面の絆かな
円に縁点線面を群と知る
自然数玩具箱から飛び出して
なぞり逢いπと1とに壺が在る
四角から円を生み出す自然数
≪…「智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。…≫で、
『数哲句』
文化の日智に働けば□生る
文化の日情に棹させば〇に生る
文化の日意地を通せば△だ