夏目漱石の小説「二百十日」についてです。
ネタバレもありますので、ご注意を!
二百十日とは
「二百十日」は1906年に発表された
夏目漱石の短めの小説です。
「草枕」と同じく熊本県が舞台で、
作者の熊本滞在中の実体験が元になったと
言われています。
主な登場人物は圭さんと碌さんの二人。
小説の大半が
この二人の会話文で成り立っており、
夏目漱石の小説の中でも
かなり異色の作品だと思います。
タイトルの「二百十日」とは、
立春から210日目にあたる日で、
現在の9月1日前後のこと。
古来より台風が多い日と言われていて、
農家にとっては厄日なんだとか。
作中では、阿蘇山に登る圭さんと碌さんが、
「二百十日」の天気の悪さに見舞われます。
ちなみに、9月1日は1923年に
関東大震災が起こった日でもあることから、
国から「防災の日」に指定されています。
あらすじ
●1章
出かけていた圭さんが宿に帰ってきて、
碌さんと話す。
圭さんが外で見たという、
馬の爪をカンカンと叩く音が聞こえる。
圭さんは子供の頃住んでいた町にあった
豆腐屋の話を始める。
豆腐屋は寺の近くにあり、
寺では毎朝カンカンと鐘が叩かれていた。
その豆腐屋は圭さんの実家で、
圭さんは豆腐屋の息子であると言う。
カンカンと爪を叩く音が聞こえると、
圭さんは昔のことを思い出す。
今の圭さんは豆腐屋に見えない。
圭さんは華族や金持ちに対して
不満を持っているようだ。
●2章
圭さんと碌さんは温泉に入って、
色々な話をする。
圭さんはものすごく体格がよくて、
豆腐屋出身だからさと言う。
碌さんは身分が良いらしい。
圭さんはまた金持ちや華族に文句を言う。
二人は、明日の朝6時に起きて
昼から阿蘇山に登る約束をする。
●3章
夜、宿屋での食事。
女中と話をして、阿蘇山のことも話題に。
阿蘇山は今荒れていて、灰が降っている。
碌さんは危ないから登りたくないと言うが、
圭さんは荒れている方が面白いと言う。
結局、碌さんは圭さんに押し切られて、
明日二人で阿蘇山に登ることになる。
●4章
いよいよ阿蘇山に登る圭さんと碌さん。
圭さんは先に進み、碌さんは遅れ気味。
道中、雨が降ってくる。
雨に灰が混じっているので、
二人とも顔は真っ黒。
どんどん、空が荒れてくる。
碌さんは足に豆ができて、疲労困憊。
さらに道に迷ってしまったらしい。
圭さんが少し先にある高い草山に登って、
道を確かめることに。
碌さんは待っていたが、
地面の下の方から圭さんの
「おおおい」という声が聞こえる。
圭さんは、草の中に隠れていた
谷のような場所に落ちてしまっていた。
今日は「二百十日」の
嵐の日かもしれないねと話す二人。
圭さんを助けるため、
碌さんは持っていたこうもり傘の先に
着物の帯を結び付け、谷に投げ入れる。
それをつかんだ圭さんは、
何とか碌さんに引っ張り上げられた。
●5章
翌朝、戻ってきた宿で休む二人。
圭さんは昨日失敗した
阿蘇山登山にまた挑戦したいが、
碌さんはもうこりごり。
圭さんは金持ちや華族が
悪事を働くのが許せないと言う。
圭さんは自分に同意するかと碌さんに問う。
碌さんは同意する。
それなら一緒に阿蘇山に登れと言う。
碌さんは登ればいいだろうと言う。
感想
出だしから会話が延々と続くので、
取っつきにくい作品ですね。
誰がしゃべっているのか、
最初はよく分からないですし(^^;
なので、一度さらっと読んでみて、
二度、三度と読み直してみるのが、
おすすめの読み方かなと思います。
量が短いので、1時間もあれば読めますし。
内容が理解ができれば、
めちゃくちゃ面白いとは言いませんが、
それなりに面白いですよ(^^)
小説の内容は、
阿蘇山への登山をメインイベントに、
主人公が度々、権力に対する不満を
口にするというもの。
作者自身の思いも投影されているでしょうね。
印象に残っている場面は2つ。
1つは第3章、女中とのコミカルな会話。
阿蘇山登山の前夜、
食事の際に女中と会話するんですけど、
その内容が面白いです。
女中に半熟卵を持ってきてくれと頼むと
半熟卵を知らないと言うので、
「卵を半分煮るんだ」と教えると
ゆで卵と生卵が1つずつ出てきて
「半分煮て参りました」(^^)
他にも、ビールを頼むと
「ビールはござりまっせん。
恵比寿ならござります」(^^)
落語か小噺ですよね~。
阿蘇の方言も出てきて、
ここのやり取りは面白かったです(^^)
もう1つ印象に残ったのは第4章、
二百十日の嵐の中、阿蘇山に登山中、
谷に落ちた圭さんを碌さんが助ける場面です。
ここは、会話だけじゃなくて
詳細な状況描写もある珍しい場面。
劇中、豪快な性格で常に
碌さんを引っ張っていた圭さんが、
碌さんに引っ張り上げられて助けられるという、
印象に残る場面です。
物語のクライマックスシーンということもあり、
手に汗握る内容になっています。
最後に、熊本県公式観光サイトの
「二百十日」説明ページへのリンクも
載せておきます。
「二百十日」のことが
より深く分かるかも(^^)