1939年のアメリカ映画
「嵐が丘(Wuthering Heights)」
についてです。
ネタバレもありますので、ご注意を!
嵐が丘とは
19世紀のイギリス人女性作家
エミリー・ブロンテの同名小説が原作。
彼女は女性作家姉妹として有名な
「ブロンテ三姉妹」の真ん中で、
姉のシャーロット・ブロンテは
オーソン・ウェルズ&
ジョーン・フォンテイン主演の映画
「ジェーン・エア」の原作者です。
ちなみに、実際は三姉妹ではなく
六人姉妹(一人は男、小説家は三人)で、
エミリーは上から5番目の子です。
本作「嵐が丘」の内容は、
「壮大なスケールの昼ドラ」
といった感じでしょうか(^^)
とにかくドロドロの展開なんですが、
非常によく作り込まれた小説になっています。
映画の監督は「ローマの休日(1953年)」で
有名な巨匠ウィリアム・ワイラー。
「ローマの休日」の15年近く前の公開なので、
巨匠の若き日の作品ということになりますね。
第12回アカデミー賞(1939年対象)では、
・作品賞
・監督賞(ウィリアム・ワイラー)
・主演男優賞(ローレンス・オリヴィエ)
・助演女優賞
(ジェラルディン・フィッツジェラルド)
・脚色賞
・作曲賞
・美術監督賞
・撮影賞(白黒部門)
の8部門でノミネートされましたが、
受賞したのは撮影賞(白黒部門)のみ。
この年のアカデミー賞は、
ヴィヴィアン・リー主演の
「風と共に去りぬ」が、13ノミネートで
8部門(特別賞も入れると9部門)受賞という、
とんでもない記録を達成しています。
さすがの若き日の巨匠も、歴史的な
超大作には勝てなかったようです(^^)
日本でも、何度も映画化・舞台化されていて、
1988年に松田優作さん&田中裕子さんで映画化。
舞台化は宝塚歌劇で何度もされていますが、
それ以外では、
2011年の山崎育三郎さん&安倍なつみさん、
2015年の山本耕史さん&堀北真希さん
の舞台化作品が有名だと思います。
どちらも舞台後に結婚ということで
話題になりましたよね~(^^)
7人の登場人物
●ネリー
アーンショー家のお手伝いさんで物語の語り手。
アーンショー家の全てを知る人物。
●アーンショー氏
ヒンドリー&キャサリン兄妹の父。
ヒースクリフという孤児を善意で家に
引き取るが、それが全ての悲劇の始まり。
●ヒンドリー
アーンショー家の長男。
自分よりも父に可愛がられる
ヒースクリフに敵対心を持つ。
父の死後、アーンショー家の主人となり、
ヒースクリフを召使のように扱う。
●キャサリン
アーンショー家の長女。
ヒースクリフと互いに恋心を抱くが、
財産と格のあるリントン家に嫁ぐ。
幸せな結婚生活を送りながらも
ひそかにヒースクリフのことを想い続け、
精神的にどんどん弱っていく。
●エドガー
リントン家の長男。
大金持ちの子息でキャサリンと結婚するが、
ヒースクリフに苦しめられることになる。
●イザベラ
リントン家の長女。
兄ヒンドリーや兄嫁キャサリンと
良好な関係を保っていたが、
ヒースクリフが現れてそれも一変。
兄夫婦の反対を押し切ってヒースクリフと
結婚し、転落の道を歩んでいくことになる。
●ヒースクリフ
主人公。みなしごだったが、
アーンショー家に引き取られる。
アーンショー氏の死後、
彼の息子ヒンドリーに虐げられ、
さらに愛するキャサリンに裏切られたと感じ、
アーンショー家を出る。
数年後、戻ってきた彼は
富と知恵を身につけており、
アーンショー家に執拗な復讐を始める・・・。
感想
原作と違いすぎる!
というのが一番の感想ですね。
「ヒースクリフの復讐」がテーマなのは
原作も映画も同じなんですが、何と言うか、
映画はものすごくマイルドなんですよね~。
原作は昼ドラも青ざめるぐらいの
もっとさらに泥沼の泥沼です(^^;
自分の子供たちでさえ
平気で復讐に巻き込みますからね~(^^;
映画では子供に関する場面は一切ないし、
ヒースクリフ&キャサリンの
とり憑かれ具合もすごく弱いです。
監督のウィリアム・ワイラーは
あらゆるジャンルの名監督として有名ですけど、
さすがにサイコ系というか
そっち系は専門外だったようで(^^;
巨匠が上手くまとめた分、
原作のエキセントリックさが
失われてしまった感じがします。
なので、日本語訳の文庫版も
たくさん出版されていますし、
そちらを読まれることをお勧めします!
そして映画版と比べてみれば、
その違いが感じられると思います(^^)