夏目漱石の「門」を読了!あらすじや感想です!

小説 小説

夏目漱石の小説「門」についてです。

ネタバレもありますので、ご注意を!

門とは

夏目漱石の小説「門」は、
1910年、朝日新聞上に連載された
全23章の小説で、「三四郎」「それから」に続く
前期三部作の最後の作品です。

「門」では、前作「それから」で、
略奪愛の末に全てを失いながらも一緒になった、
代助と三千代の「それから」が描かれています。

登場人物は代助と三千代から
宗助と御米に代わっていますし、
その他の色々な設定も代わっていますが、
事実上の続編と言っていいでしょう。

ちなみに「三四郎」と
「それから」「門」の間には、
直接的な関連はありません。

あえて関連付けて言えば、
「三四郎」で失恋した青年が、
年を重ねて「それから」で親友の妻を略奪愛、
そして「門」でその後が描かれる・・・
といった感じになるでしょうか。

主な登場人物

・野中 宗助(のなか そうすけ)
主人公。東京の役所で働く。父母はすでに故人。

・御米(およね)
宗助の妻。
夫婦仲は良いが、最近体調がすぐれない。

・小六(ころく)
宗助の弟。宗助とは約10才違い。

・佐伯(さえき)夫妻
宗助の叔父(故人)と叔母。
宗助の父死亡後、小六を引き取る。

・安之助(やすのすけ)
佐伯の息子。小六とはいとこで仲がいい。

・坂井(さかい)
宗助が住む借家の大家。社交的な資産家。

・安井(やすい)
宗助の友人。学生時代、御米を宗助に紹介した。

あらすじ

●1章
宗助は佐伯に手紙を書いた。
手紙でダメだった場合は、直接会うつもりだ。
宗助が手紙を出しに家を出ると、
弟の小六が入れ替わりでやってきた。
小六は義姉の御米に、兄が佐伯と会って
例の話をしてくれたか問う。
御米は、まだ夫は会っていないが、
手紙を出しにいったところだと答える。

●2章
宗助は手紙を出した後、
街をブラブラとして家に帰る。
家に来ていた小六と会うが、少し気まずい。
御米はお手伝いの清と食事の支度をする。

●3章
宗助と小六は風呂へ行き、
帰宅すると食事ができていた。
食事を済ますと、小六が宗助に佐伯の件を問う。
宗助は済まないが何も進んでいないと言い、
今日手紙を出したので、
その返事が来てから相談しようと答える。

●4章
宗助の元に、叔母の佐伯から手紙の返事が届く。
息子の安之助が神戸から帰京したらそちらに伺う
という内容で、宗助は小六にも知らせる。
宗助は自分の人生を思い返す。
・大学を中退しなければならなかった
・東京の家にも帰れない事態になった
・父が亡くなった(母はその6年前に死亡)
・実家に多額の借金があった
・実家のお金の問題は叔父の佐伯に任せた
・弟の小六の世話も叔父に任せた
・学生時代の友人・杉原のおかげで東京に戻れた
・叔父が急死した
・叔母が小六の世話はもう見れないと伝えてきた
・下宿暮らしの小六を引き取ると決めた
・叔母には月々の援助を頼むことにした
しかし、叔母と援助の話はまだ出来ておらず、
ようやく手紙を書いて、
その返事が来たところだ。

●5章
宗助の外出中、叔母が訪ねてきた。
御米が対応したが、小六の月謝や小遣いは
出せないとのことだった。宗助はひとまず、
小六を自分の家に住まわせることを決める。

●6章
小六はなかなか引越して来なかった。
御米は宗助に、小六はまだ自分を憎んでいる
のかと問い、宗助はそんなことはないと答える。
宗助と御米は、宗助の父の形見の屏風を売る。

●7章
夜、大きな音がして御米は目を覚ます。
朝になって宗助が庭を見にいくと、
草がすりむけ、手文庫が落ちていた。
どうやら、家の裏側にある坂井宅に泥棒が入り、
そこから家の庭を通って逃げたらしい。
宗助は自分の家の家主でもある坂井の家を訪れ、
手文庫を渡して会話を交わした。

●8章
小六がようやく引越してきた。
学校は休学中である。
御米は義弟のいる生活に戸惑いを感じる。

●9章
宗助は大家の坂井と
以前よりも親しくなっていた。
坂井が屏風を買ったという話を聞き
坂井宅を訪れてみると、
その屏風は父の形見の屏風だった。
自分たちが35円で売ったものを、
坂井は80円で買っていたのだ。
そういう話をして、
宗助と坂井はさらに親しくなった。

●10章
叔母は全く家に来なかったが、
小六は叔母や安之助に時々会いにいっていた。
御米は小六が酒を飲んで帰宅するのを見て、
安之助に小遣いをもらっているのかと疑う。
安之助の縁談が延期になり、
小六は経済的な理由だろうと推測する。

●11章
小六が家にやってきてから、
御米は色々と気を使うことが多く、
宗助は御米の体調の心配をしていた。
ある日、御米が肩のあたりを右手で抑えて、
深刻な様子で苦しいと訴えるので、
宗助は驚いて医者を呼ぶ。
医者が処置をすると大分よくなったようで、
薬を飲むと御米は眠った。

●12章
翌日役所へ出勤した宗助だが、
御米のことが気になり昼で早退する。
御米は昨晩からずっと寝たままなので、
宗助は心配になりまた医者を呼ぶ。
御米を往診した医者が心配ないと説明すると、
宗助は安心する。御米の目も覚めた。

●13章
御米の体調は落ち着いていたが、
宗助は不安だった。
ある日坂井宅から帰った宗助が御米に、
子供のいる家は陽気だと言うと、
御米は自分には子供ができないと言って
泣き出す。御米は流産を三回経験していた。
一度目は京都で妊娠5ヵ月での早産。
二度目は福岡でまた月足らずの早産。
三度目は東京で出産時にへその緒が首に絡まり、
原因は御米が妊娠5ヵ月目に転んだことに
あった。御米はその後占い師のところへ行き、
あなたには子供はできないと言われていた
ことを、初めて宗助に打ち明ける。
宗助はそんなところへ行くんじゃないと告げる。

●14章
宗助は東京の資産家の子息で、
今と違い社交的な性格だった。
京都での学生時代、
安井という仲のいい友人がいた。
安井は進級時にしばらく姿を見せなくなった後、
下宿を引き払って小さな家を借りた。
宗助がその家に行くと、一人の女性がいた。
安井はその女性を自分の妹だと紹介した。
それが御米だった。
宗助と御米は次第に親しくなっていく。
そして、世間は2人に道徳上の罪を背負わせた。
最終的に宗助と御米は、
親・親戚・友人・学校・社会を棄て、
またそれらから棄てられた。

●15章
宗助と御米は、広島でも福岡でも、
そして東京でも苦しんだ。
今でも佐伯とは親しい関係を結べず、
御米を憎んでいた小六は、
今も腹の底では兄に敬意を払っていなかった。
そんな家族に今年も大晦日が通り過ぎた。

●16章
正月が過ぎ、宗助は坂井の家に来た。
坂井は小六を書生にしたいと申し出て、
宗助はそうなれば小六を大学にやれると喜ぶ。
その後、坂井は自分の弟の話を始める。
坂井の弟はモンゴルにいたが、
去年の暮れに突然帰ってきた。
宗助にその弟を今度紹介しようと言う。
宗助は会うのは弟一人だけかと聞くと、
坂井は、もう一人、向こうで友達になった
安井という男も一緒だと答える。
宗助は青い顔をして坂井の家を出た。

●17章
宗助と御米は、自分たちの行動が原因で、
安井を退学させ、故郷へ帰らせ、病気にさせ、
海外へと追いやった事に対して、
悔恨の苦しみを重ねていた。
宗助は坂井から安井の消息を聞かされて以降、
苦しみを抱えていたが、御米にも黙っていた。
坂井の家に安井がやってくるはずの晩、
宗助は不安な一夜を過ごした。

●18章
宗助は、坊さんの知人がいる同僚に
紹介状を書いてもらい、
御米には1週間ほど療養してくると伝え、
鎌倉の禅寺へ行った。
山中にある寺の門をくぐると、
宜道という若い僧が出迎えてくれた。
寺の老師には
「父母未生以前本来の面目は何」か、
よく考えてみろという公案を出された。
御米に手紙を出した。

●19章
宗助は公案の答えを考え老師のところへ行くが、
一句だけしか伝えることができず、
老師にそれではダメだと言われる。

●20章
宗助は宜道から色々な話を聞き、
老師からは説法を受けた。

●21章
山寺での日々は過ぎていき、
御米からは長い手紙もきていたが、
返事は出さなかった。宗助は、
自分の中での問題は何も解決しておらず、
このままでは寺に来た甲斐がなく、
宜道にも申し訳ないと感じていた。
宗助が「悟りを開けそうにない」と言うと、
宜道は「信念さえあれば誰でも悟れる」と
伝える。そして帰る日がやってきた。
結局、何も得ることはできなかった。
老師にも惜しいことだと言われる。
宗助は寺の門をくぐったが、
彼は門を通る人でも通らずに済む人でもなく、
門の下に立ちすくんで日暮を待つ
不孝な人だった。

●22章
御米は帰ってきた宗助を見て、
行く前よりも体調が悪くなったように感じた。
坂井からは何も連絡はなかったようだ。
宗助が坂井のところへ行くと、
坂井の弟はもうモンゴルへ帰っていて、
安井も一緒に行ったとのことだった。
宗助は、坂井が安井の前で自分の名を出したか
聞きたかったが、どうしても聞けなかった。

●23章
月日がたち、宗助は月給が5円上がった。
小六は書生として安井の家に住み込んだ。
宗助と御米は小康を得たのだ。
穏やかな日々が続き、御米が
「ありがたいわね。ようやく春になって」
と言うと、宗助は
「うん、でもまたすぐ冬になるよ」と答えた。

感想

一言でいうと「消化不良」です。

何でかと言うと、本来あるはずの
クライマックスがなかったから。

例えるなら、
「あしたのジョー」で力石との対決がない
「スターウォーズ」でダースベイダーがいない
「タイタニック」でタイタニックが沈まない
みたいな感じです(^^;

いや、途中まではよかったんですよ。

淡々と進みながらも
いい感じで盛り上がってきて、
そして終盤、主人公の宗助が因縁の安井と会って
さあ、直接対決だ!!っていうところで、
宗助が安井と会わずに
なぜか寺へ駆け込むっていう(^^;

漱石さん、一番盛り上がるところだし、
そこはちゃんと書いて下さいよ(^^;

本当なら宗助と安井が会う場面で、
・学生時代の安井と御米の関係
・宗助と御米の略奪愛の経緯
・宗助に御米を奪われた安井のその後
など、読者が気になっていた部分の説明が
あったはずなんですよ。

それが一切ないから、
疑問が全く解消されないんですよね(^^;

物語序盤からあった御米の病弱フラグも、
小六の義姉不信フラグも、
結局活かされなかったし。

全てが中途半端のまま、
終わってしまった感じがします。

「やっと春が来たわね」
「すぐに冬が来るさ」っていう
ラストシーンは悪くはないんですけどね。

漱石さんも体調不良で
お疲れだったのかなと思います(^^;

前期三部作を振り返ってみると、
一番印象に残っているのは
「それから」の略奪愛ですね。やっぱり(^^)

三千代さんの「覚悟を極めましょう」は
破壊力十分でした(^^)

「三四郎」美禰子さんの「ストレイシープ」も
印象に残ってますけど、
さすがに略奪愛には勝てません(^^)

三部作を通したストーリーは、
三四郎で失恋した純朴な青年が、
時を経て親友の妻を略奪愛で奪い取り、
そして色々なものを抱えながらも
二人で暮らしていく・・・。

「門」が消化不良に終わったのは残念ですけど、
三部作トータルでは、十分楽しめました(^^)

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