夏目漱石の「こころ」を読了!あらすじや感想です!

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夏目漱石の小説「こころ」についてです。

ネタバレもありますので、ご注意を!

目次

こころとは
主な登場人物
あらすじ
・上 先生と私(全36章)
・中 両親と私(全18章)
・下 先生と遺書(全56章)
感想
前・後期三部作を読了して

こころとは

「こころ(こゝろ)」は、
1914年に朝日新聞上で連載された
夏目漱石の長編小説です。

「彼岸過迄」「行人」に続く、
後期三部作の最後の作品になります。

上・中・下の3編に分かれていて、
全編に渡り主人公「私」が「先生」との
出会いから別れまでを回想するという
内容になっています。

主な登場人物

・私(わたくし)
…主人公。田舎から上京中の学生。家族は父,母,兄,妹。

・先生
…故人。新潟出身。先生とは主人公からの呼び名。

・静(しず)
…先生の妻。東京出身。

・K
…先生の親友。寺の次男坊。

あらすじ

上 先生と私

●1~3章
「私」と「先生」は、「私」が書生だった頃
夏休みに訪れた鎌倉の海で知り合う。

●4~6章
「私」は東京の「先生」の自宅を何度も訪れ、
静(先生の妻)とも懇意になる。
「先生」は毎月雑司ヶ谷で友人の墓参りをしていたが、
静や「私」と一緒に行くことはなかった。

●7~10章
「先生」は自分のことを淋しい人間だと称し、
子がいないのは天罰だからと言う。
自分たち夫婦は最も幸福であるべきはずとも言う。

●11~14章
「私」は大学生になる。
静は「私」に、夫は若い時と変わってしまったが
その理由が分らないと言う。
「先生」は「私」に、恋は罪悪だと言い、
人間全体を信用しない、自分自身でさえ信用できない、
私を信用すると後悔するぞと話す。

●15~20章
静は「私」に、自分は「先生」に嫌われている、
人間が嫌いな「先生」に好かれるはずがないと言う。
静は「先生」が変わった理由がどうしても分からないが、
もしかしたら「先生」の親友の変死が
その理由かもしれないと「私」に打ち明ける。

●21~25章
冬になり、「私」は父親の体調が悪いとの
報せを受けたので故郷に帰る。
父の容体はそれほど重いようには見えなかった。
東京に戻った「私」は卒業論文を書き上げる。

●26~31章
「先生」は散歩中「私」に、
父の存命中に財産を貰っておくように、
金を見ると君子でも悪人になるからと言う。
「先生」は、自分はかつて財産家だったが、
父が死ぬや否や親戚に欺かれたので、
彼らばかりではなく人間というものを憎むのだと話す。
「先生」は人生でたった一人でいいから
他人を信用したいと言い、真面目な「私」になら
いつの日か自分の過去を話しましょうと約束する。

●32~36章
「私」は卒業式を終え「先生」の家でご馳走になり、
将来のことはまだ考えていないと話す。
「先生」は静に、おれとお前のどちらが先に
亡くなるだろうと問うが、
静は縁起でもないことを言わないでと答える。
「私」は9月にまた東京に戻ると言い、
家族への土産を買って故郷へ汽車で帰る。

以下は「私」目線での各章要約
1章…書生時代の夏休み、鎌倉の海で先生と知り合う
2章…先生は西洋人と一緒にいたので目に付いた
3章…海水浴中に先生に話しかけられ懇意になる
4章…帰京し授業が始まる。先生を訪ねると留守だった
5章…先生は雑司ヶ谷で友人の墓参り中だった
6章…先生を度々訪問するが墓参りの同行は断られる
7章…先生は自分は淋しい人間だと繰り返す
8章…先生は自分に子ができない理由を天罰だと言う
9章…先生と奥さんは仲がいいが喧嘩することもあった
10章…先生は私たち夫婦は最も幸福であるべきだと言う
11章…大学生になる。奥さんは先生が昔と別人だと言う
12章…先生は恋は罪悪だと言う
13章…先生は私に満足を与えられない人間だと言う
14章…先生は人間全体も自分自身も信用しないと言う
15章…先生が帰宅するまで奥さんと留守番をする
16章…奥さんは自分も先生に嫌われている一人だと言う
17章…奥さんは人が嫌いな先生は自分も嫌いだろうと言う
18章…奥さんは先生が変わった理由が分からないと言う
19章…奥さんは親友の変死が先生の変化の理由かもと話す
20章…先生が帰宅すると奥さんは明るく振舞う
21章…冬、父の腎臓病が悪いと報せがあり、国に帰る
22章…父の病気は重くない。先生に手紙を書き返事が来る
23章…冬休みが終わる少し前に東京へ出発する
24章…帰京し先生に無心した金(旅費)を返す
25章…4月下旬にようやく卒業論文を書き上げる
26章…先生と散歩がてら郊外へ行く
27章…先生が家に財産はあるかと尋ねてくる
28章…先生は父が存命中に財産問題を片付けろと言う
29章…先生は金を見ると君子でも悪人になると言う
30章…先生は自分を欺いた親戚を、人間を憎むと言う
31章…先生は真面目な私にはいつか過去を話すと約束する
32章…卒業した日の晩、先生の家でご馳走になる
33章…先生は父の存命中に財産を分けてもらえと言う
34章…先生は奥さんにどちらが先に亡くなるかと問う
35章…奥さんは縁起でもないことは言わないでと言う
36章…両親への土産を買い、汽車で国へ帰る

中 両親と私

●1~7章
7月上旬「私」は故郷へ戻り、両親は息子の卒業を喜ぶ。
父は元気そうに見えたが、次第に衰えていく。
「私」は「先生」に近況報告の手紙を出し、
さらに両親に言われ就職斡旋願いの手紙を出すが、
予想に反していずれも返事がこない。

●8~13章
9月になり「私」は東京へ戻ることを決めるが、
父が倒れたので取りやめになる。
父の病状は思わしくなく「私」の兄や
妹の夫(妹は妊娠中のため)も駆けつける。
「先生」から会えないかという電報が届くが、
行けないと返信する。
するとそれなら来ないでいいとまた電報が届く。
「私」は詳細を書いた手紙を送る。

●14~16章
「私」は兄に家の財産について尋ねるが
知らないと言われる。また兄からは、
父が亡くなったら母と一緒に暮らせと言われる。
父の病状が深刻になる中、
「私」に「先生」から長い手紙が届く。

●17~18章
手紙に少し目を通してみると、
「先生」の過去について綴られていること、
そして「先生」が既に他界していることが読み取れた。
父は危篤状態に陥っていたが、
「私」は居ても立っても居られずに
東京へ向かう汽車へ飛び乗る。
そして汽車の中で、手紙を最初から最後まで読んだ。

以下は「私」目線での各章要約
1章…父は自分が生きている間に卒業できたことを喜ぶ
2章…母は父の体調は大分良さそうだと言っている
3章…卒業祝いは天皇の病の報知があり中止になる
4章…先生に近況を知らせる手紙を書くが返事は来ない
5章…父の元気は次第に衰えていく
6章…両親に先生に就職を斡旋してもらうように言われる
7章…先生に就職斡旋願いの手紙を書くが返事は来ない
8章…東京で就職先を見つけると言って出発の日を決める
9章…出発の間際になって父が倒れ東京に残ることになる
10章…兄と妹に手紙を出し、とうとう電報も打つ
11章…母は父の存命中に就職先を決めてほしいと言う
12章…先生から会えないかという電報が届くが断る
13章…先生からそれなら来なくていいという電報が届く
14章…兄に家の財産のことを問うが知らないと言われる
15章…兄に家で母と暮らせと言われるが返答はできない
16章…父が最期の床に就いた時、先生から長い手紙が届く
17章…手紙を読もうとした時、父の容態が急変する
18章…手紙に先生の他界が書かれており汽車に飛び乗る。

下 先生と遺書

※全文が「先生」が「私」に書いた手紙=遺書

●1~2章
「私」の手紙に返事を書かなかったことや、
「私」の父の病状を顧みずに電報を送ったことへの謝罪。
「私」が真面目に人生の教訓を得たいと言ったから、
あなただけに自分の過去を語りたいのだと記す。

●3~9章
20歳になる以前に両親を相次いで亡くし、
両親が信頼していた叔父の世話になる。
東京の高等学校に入学し、実家には叔父一家が住む。
叔父は優しかったが、従妹(叔父の娘)との結婚を
何度も進めてくる。断ると叔父は態度を一変させる。
叔父は実家の財産をごまかしており、
結婚話も叔父の策略だったのだ。
叔父や親類を信用できなくなり、
少しばかりの金を持って故郷を離れ、
叔父一家との関係を断つ。

●10~18章
ある母娘が営む下宿に住むことになる。
叔父や親族に欺され厭世的になっていたが、
奥さんやお嬢さんには、
故郷で叔父たちに欺されたことも打ち明け、
疑う心は持ちながらも、親しくなっていく。
お嬢さんに対しては恋愛感情も増していく。
しかし、自分がこの家庭にもう一人の男を
奥さんの反対を押し切り連れてきたことで、
自分の運命は一変する。

●19~22章
寺の二男であるKは、子どもの頃からの友人だ。
Kは医者の家に養子に出されるが、
医者になる意思はなく、同じ科へ入学する。
それを知ったKの養子先や実家の父は激怒。
Kは勘当され、物質的にも精神的にも辛くなる。
そんなKを見るに見かねて家に連れてくる。

●23~27章
Kを家に連れてくることに、奥さんは
あなたにとって良くないと言って反対するが、
Kのこれまでの境遇を話して説き伏せる。
Kには奥さんやお嬢さんと関わることで、
自分がそうだったように元気になってほしかった。
事実、Kの心は打ち解けていくようだった。
ただ、Kとお嬢さんが話をしていると気にかかる。
今思えば、Kに対して十分嫉妬していた。

●28~31章
Kと一緒に旅行に出かけるが、
Kにお嬢さんへの想いを打ち明けられない。
Kと口論することもあり、Kから
精神的に向上心がないものは馬鹿だと言われる。
旅行から東京に戻る。

●32~37章
Kとお嬢さんの関わりが気になって仕方がないが、
お嬢さんがKを好いていた時のことを考えると、
自分の想いは打ち明けられない。
ある日、Kに奥さんとお嬢さんについて尋ねられる。
そしてKは、お嬢さんに対する切ない恋を打ち明ける。
大変驚いた自分は、お嬢さんへの自分の想いを
Kに話す機を逸してしまう。

●38~42章
Kに詳しい話を聞きたいが、なかなか応じてくれない。
Kの恋を知るのは自分だけとKから確認。内心喜ぶ。
Kからお嬢さんへの恋について相談され、
「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」と言う。
Kはかつて宗教上の理由から、
恋も道の妨げになるとよく主張していたのだ。
Kは「僕は馬鹿だ」と力のない声で答える。
その話はもう止めてくれと言うKに、
君の心に止めるだけの覚悟があるかと問う。
するとKは、覚悟…覚悟ならないことはないと答える。

●43~47章
Kの言う「覚悟」の意味を
お嬢さんへ突き進むと捉えてしまった自分は、
自分もお嬢さんへの想いを伝える決断をする。
そして、奥さんにお嬢さんを下さいと告白する。
奥さんは承知し、奥さんがお嬢さんに伝える。
Kには謝罪することも話すこともできない。
奥さんがKに結婚話をすでに伝えたことを聞いて、
驚き、胸が苦しくなる。

●48~50章
Kが自ら命を絶っているところを発見。
自分宛ての遺書を読む。
内容は簡単で抽象的なもので、
恐れていた自分への辛い文句は一切なかった。
ただ最後に書かれていた、
もっと早く死ぬべきだのに
なぜ今まで生きていたのだろう
という言葉を最も痛切に感じる。
奥さんにKの件を伝え、一緒に後片付けをする。
Kの父兄に、Kが生前好きだった雑司ヶ谷に
墓を建てることを伝え、了承を得る。
この墓に毎月ひざまずいて懺悔をしたい。

●51~52章
多くの人から、Kが自ら命を絶った理由を聞かれるが、
自分がその原因だと白状することはできない。
その後、引越しをして、大学を卒業、
お嬢さんと結婚もする。
しかし、幸福には黒い影がついていた。
妻と顔を合わせると、常にKが結びついてくるのだ。
妻を遠ざけようとすると、
妻から詰問を受けることもあり、苦しい。
妻の記憶に暗黒の一点を印することが忍びないので、
彼女には真実を打ち明けられない。
自分だけは立派な人間だと思っていたが、
叔父と同類の人間だと分かり、自分にも愛想を尽かす。

●53~54章
Kの死因を繰り返し考えると、
失恋のためというより、今の自分と同じように、
一人で寂しくって仕方がなくなったからではと考え、
自分もKと同じ路を辿っているのだと予覚する。
妻の母が亡くなる。
妻は世の中で頼りにするものは一人になったと言う。
自分自身さえ頼りにできない自分は、
妻の顔を見て思わず涙ぐむ。
自分は死んだ気で生きて行こうと決心する。

●55~56章
今日に至るまで既に二三度
楽な方向へ進もうとしたことがあるが、
いつでも妻に思い止まらされた。
そして妻を道連れにする勇気は無論ない。
自分はこんな風にして生きてきた。
妻のために命を引きずって
世の中を歩いていたようなものだ。
明治が終わり、とうとう決心をした。
妻を残して逝くが、衣食住の心配がないのは幸せだ。
決心をしてから10日以上になるが、
大部分はこの手紙を書くことに使用された。
そして手紙を書き終えた今、もう何もすることはない。
この手紙をあなたが手にする頃、
自分はもうこの世にはいないだろう。
ただ、妻にはこの手紙を秘密にしておいてほしい。
妻が己れの過去に対してもつ記憶を
なるべく純白に保存しておいてやりたいというのが、
自分の唯一の希望なのだから。

以下は「先生」目線での各章要約
1章…手紙に返事をしなかったことを謝る
2章…真面目なあなただけに自分の過去を語りたい
3章…20歳になる以前に両親を相次いで亡くす
4章…母の遺言で叔父の世話に。東京の高等学校に入る
5章…実家には叔父が住む。叔父からの縁談を断る
6章…従妹(叔父の娘)との縁談をまた断る
7章…叔父一家の態度が一変する
8章…叔父任せにしていた家の財産について談判する
9章…叔父は財産をごまかしていた。叔父一家と別れる
10章…母娘が営む下宿に住むことになる
11章…お嬢さんが活けた花や弾く琴の音を楽しむ
12章…厭世的であるがお嬢さんを好く余裕はある
13章…奥さんやお嬢さんと親しくなっていく
14章…お嬢さんに対する恋愛の度は増していく
15章…奥さんやお嬢さんを策略家ではと疑う心もある
16章…この先二度と人に欺されまいと決心している
17章…奥さん、お嬢さんと一緒に買い物に出かける
18章…ある男を家庭に連れ込んだことで運命は変わる
19章…子供の頃からの友人Kの養子先は医者だった
20章…Kは養父を欺き医者とは違う科へ進む
21章…Kは養父と実父の怒りをかい勘当される
22章…物質的・精神的に辛そうなKを家に連れてくる
23章…Kを連れてくることに奥さんは反対する
24章…Kには自分のようにこの家で元気になってほしい
25章…奥さんとお嬢さんにKと関わるように頼む
26章…Kの部屋でKとお嬢さんが話をしている
27章…今思えばその頃から十分Kに対し嫉妬していた
28章…Kと一緒に房州へ旅行に出る
29章…お嬢さんへの想いをKに打ち明けられない
30章…Kに精神的に向上心がない者は馬鹿と言われる
31章…口論をすることもあったが、旅行から戻る
32章…Kとお嬢さんとの関りが普通以上に見える
33章…Kとお嬢さんが外で一緒にいるのを見て驚く
34章…お嬢さんがKを好いているのではと考える
35章…Kが奥さんとお嬢さんの外出先を尋ねてくる
36章…Kからお嬢さんへの切ない恋を打ち明けられる
37章…Kに自分の心を打ち明けることはできなかった
38章…Kに詳しい話を聞きたいが応じてくれない
39章…Kの想いを知るのは自分だけとKに確認し、喜ぶ
40章…Kからお嬢さんへの想いについて相談される
41章…精神的に向上心のないものは馬鹿だとKに伝える
42章…Kは覚悟ならない事もないとつぶやく
43章…Kに深夜に声をかけられるがKは用はないと言う
44章…自分のお嬢さんへの想いを伝える決断をする
45章…奥さんにお嬢さんを下さいと談判。了承を得る
46章…お嬢さんに結婚話が伝わる。Kには話せない
47章…奥さんがKに結婚話を伝えていた。胸が苦しい
48章…Kが自ら命を絶つ。自分宛ての遺書を読む
49章…奥さんにKの件を伝える
50章…Kの父兄に雑司ヶ谷に墓を建てることを伝える
51章…引越し,卒業,結婚をするが黒い影がついている
52章…妻を見るといつもKに脅かされる
53章…Kと同じ路を辿っていると考え出す
54章…死んだ気で生きて行こうと決心する
55章…妻のために命を引きずって生きてきた
56章…あなたが手紙を読む頃、この世にはもういない

感想

小説の中に引き込む力はすごく強い。
でも、登場人物に共感はできない。
・・・というのが正直な感想です(^^)

●小説の中に引き込む力

本作は上・中・下の3編に分かれていますが、
「上」の序盤でいきなり
先生がすでに故人であることが明かされます。
ここがこの小説最大の驚きポイントで、
一気に小説の中に引き込まれました。
そして先生がすごく変わり者であることが綴られます。
「なぜ先生が故人なのか」「何が先生を変えたのか」
この2つの理由を知りたくて、
ページをめくるスピードが加速するわけです。

「中」は帰省中に私の父がどんどん弱っていく話。
最終的に危篤に陥るので、当然緊迫感があるんですが、
それと並行して先生からの手紙=遺書が届きます。
先生が亡くなったことを知り、
危篤状態の父を残して、汽車に飛び乗る私。
緊迫感MAXの手に汗握る場面でした。
小説の書き方として、とても上手い手法だと思います。

「下」は全編が先生の遺書。
「上」での疑問が全て解けていきます。
言うまでもなく、どんどん読み進めていけます。

本作は長編小説ですけど、
前期三部作、後期三部作を通じて、
読む時間は一番短かったかもしれません。

それだけ引き込む力が強かったですね。

●登場人物に共感できない

誰に共感できないかというと、ずばり先生です。

まず先生は、両親が亡くなった後、
両親が信頼していた叔父に引き取られますが、
その叔父が両親の遺産を使い込んでいました。
結果、先生は人間が信頼できなくなります。
→これは理解できます。

その後先生は、親友のKと同じ女性を愛し、
Kの想いを知りながら先に告白して結婚を約束。
それを知ったKは自ら命を絶ちます。
先生は親友を傷つけ命も奪ってしまったと、
自分自身も信頼できなくなります。
→これも理解はできます。

そして先生は、愛する妻を見るたびに
Kを思い出し自責の念にかられるという、
辛い日々を何年間も過ごした後、
明治の終わりをきっかけとして自ら命を絶ちます。
→これが理解できません。

先生は過去の出来事から
あらゆる人間も自分でさえも信用できずに
世捨て人のような生活を送っていて、
妻はその原因は自分にあると思い悩んでいます。
先生は真実を妻に話せば、
きっと受け入れてくれると考えています。

じゃあ話せよって思いませんか(^^;

で、話さない理由は、
妻の記憶を純白のままにしておきたい。
暗黒の一点を印したくないから。

愛する夫がいきなり自ら命を絶って、
記憶が純白のままでいられるか(^^;

暗黒の一点が印されるでしょ(^^;

そもそも妻は、夫が悩んでいる原因は
自分にあると考えていたわけで、
夫が命を絶ったら、その原因も自分にあると
考えてしまいますよね?

妻、あと追っちゃうよ(^^;

先生の不幸な境遇には同情しますが、
愛する妻を一番傷つける選択を
最後にしてしまったことが残念でなりません。

・・・ということで、まず「上」の冒頭で
先生が故人であることを提示して読者をひきつけ、
次の「中」で親の危篤と先生からの遺書を
同時進行させることで緊張感を極限まで高め、
最後の「下」は全文、先生の遺書で終わる
という小説の組み立て方はお見事の一言ですが、
事実上の主人公である先生に対しては、
共感できなかったということです。

前・後期三部作を読了して

前期三部作「三四郎」「それから」「門」、
後期三部作「彼岸過迄」「行人」「こころ」、
すべて読了したので、感想などをまとめておきます。

まず作品の共通点として、
前期三部作は、
初恋(三四郎)→
略奪愛(それから)→
略奪愛のその後(門)という
ストーリーのつながり(登場人物は別)があり、
後期三部作は、
主人公とは別に真の主人公がいるという、
小説の構成が似通っています。
・彼岸過迄…主人公:敬太郎/真の主人公:須永
・行人…主人公:二郎/真の主人公:一郎
・こころ…主人公:私/真の主人公:先生
主人公は世にも奇妙な物語の
タモリさん的なポジションです(^^)

それに後期三部作は、ラストが登場人物の
長い独白で終わるという点も共通していますね。
真の主人公は悩める人間だけど、
本当はこういう人間なんだよっていう
作者の解説にもなっていると思います。
そこに共感できるかどうかは別問題ですが(^^;

6作全体の共通点としては、
作者自身の体調が悪かったこともあり、
病気を患っている人や亡くなってしまう人が
たくさん登場する点があげられます。
作者の実体験が元になっていると思われる、
病気や病院のかなり詳細な描写も数多くあります。
三四郎は例外ですけどね。

三四郎の連載が1908年、こころの連載が1914年。
作者は1910年に胃の大病を患って以降、
断続的に闘病生活が続き、没年が1916年です。
後期三部作の頃には、
相当体調も悪かったでしょうね・・・。

最後に、前期三部作と後期三部作に
直接の関連性はありませんが、
「こころ」は「それから」「門」と同じく、
略奪愛が一つのテーマと言えると思います。

「それから」「門」のように
夫から妻を奪い取るという形ではありませんが、
先生にしてみれば、Kから彼が好きなお嬢さんを
奪い取った形になるわけですから。

「それから」で略奪愛を成就させ、
「門」でその後の厭世的な夫婦生活が描かれ、
最終的に「こころ」で自ら命を絶つと・・・。

やりきれない結末となってしまいました・・・。

いくつか、勉強になった点もありました。
明治は学校が9月から始まること。
大学を卒業しても働かない人が少なくないこと。
職探しも卒業後に始まっていたみたいだし、
今とは大分違っていたんだなと思いました。

今の時代とは色々と考え方が違う部分もあり、
共感できる登場人物はあまりいませんでしたが、
ただ、6作品全て、読み応えは十分ありました(^^)

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